ルノワールとは|幸福を描いた印象派、光あふれる人物画

ルノワール——幸福を描いた画家

木漏れ日の下で談笑し、踊る人々。頬を染めた女性たち。ピエール=オーギュスト・ルノワールの絵は、観ているだけで心が温かくなる、幸福感に満ちています。同じ印象派でも、モネが風景と光を追い求めたのに対し、ルノワールが生涯こだわったのは、人間そのもの、そして人生の楽しさでした。

筆者は美術検定の勉強をしながら、美術史を学び直しています。学んでいて面白いのは、同じ「印象派」という枠のなかにも、画家によってこれほど個性の違いがあると気づくことです。この記事では、ルノワールの魅力を、モネとの違いもあわせて、実物を観る前の予習としてまとめます。

ルノワールとは(基本情報)

  • 生没年:1841〜1919年(フランス)
  • 位置づけ:印象派を代表する画家の一人
  • 得意とした主題:人物、とくに女性や子ども、楽しげな社交の情景
  • 代表作:《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》《舟遊びの昼食》など

ルノワールは、もともと陶器に絵付けをする職人からスタートしました。そこで培った、明るくやわらかな色の感覚が、のちの絵にも生きています。モネらとともに、光と色を追い求める印象派の運動を、若い頃から支えた一人です。

見どころ

1. 光あふれる人物画——幸福な情景

ルノワールの絵の主役は、たいてい「楽しそうな人々」です。ダンスホールでのひととき、川辺での食事、ぶらんこで遊ぶ姿。どの絵からも、その場の笑い声やざわめきが聞こえてきそうです。人生には、こんなに美しく幸福な瞬間がある——それを絵にとどめようとした画家でした。

2. 柔らかい肌と、木漏れ日

ルノワールが得意としたのが、光を受けた肌の表現です。ふっくらとした頬や腕に、木漏れ日がちらちらと落ちる。輪郭をくっきり描かず、色と光でやわらかく包み込むように描くことで、人物はまるで生きて呼吸しているかのように見えます。触れたら温かそうな、その質感が、ルノワールならではの魅力です。

3. モネとの違い——風景か、人か

ルノワールとモネは、若い頃から親しく、並んで同じ風景を描いたこともありました。けれど、二人が本当に描きたかったものは違いました。モネが、移ろう光や自然そのものを追い続けたのに対し、ルノワールは、その光のなかで生きる人間の姿と、幸福の瞬間に心を注ぎました。同じ印象派でも、まなざしの先はこんなに違う。二人を見比べると、印象派の奥行きが見えてきます。

《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》——木漏れ日の魔法

ルノワールの代表作《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》は、パリの野外ダンスホールで、若者たちが集い、踊り、語らう休日の昼下がりを描いた一枚です。この絵の魔法は、木々のあいだから降りそそぐ木漏れ日の表現にあります。人々の顔や服の上で、光と影がちらちらと揺れ、画面全体がまるで音楽のように軽やかにきらめいています。一人ひとりの表情はやわらかく、楽しげなざわめきまで聞こえてきそうです。都会に生きる人々の、なんでもない幸福なひととき——それをこれほど生き生きと、永遠のかたちにとどめた絵は、そう多くありません。ルノワールが何を描きたかったのかが、この一枚に凝縮されています。

絵は、楽しく美しくあるべき

ルノワールには、「絵は、楽しく美しいものであるべきだ」という思いがあったといわれます。世の中には苦しいことも多いからこそ、絵くらいは、観る人を幸せな気持ちにするものであってほしい——そんな願いです。晩年、リウマチで手が思うように動かなくなっても、彼は筆を手に括りつけてまで描き続けました。後年には、豊かで健やかな裸婦像を数多く描き、生命そのものの美しさをたたえています。幸福を描くことへの、生涯変わらぬ情熱があったのです。

美術史・美術検定での位置づけ

ルノワールは、モネらと並ぶ印象派の代表的画家として、美術検定でも西洋美術史の重要人物です。「印象派」「人物画」といったキーワードとあわせて押さえておきたいところ。風景のモネ、人物のルノワール、というふうに対で覚えると、印象派の全体像がつかみやすくなります。

実物はどこで観られる?

ルノワールの作品は、パリのオルセー美術館などが多く所蔵していますが、じつは日本でも実物に出会えます。東京・上野の国立西洋美術館は、松方コレクションを中心にルノワール作品を所蔵することで知られています。展示替えで出ていないこともあるので、観に行く前に展示情報を確認しておくと確実です。

観た記録を残すと、鑑賞はもっと深くなる

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